ずっと認めたくなかったこと
自分の好きを追求し続ける人生にしたい。そのために、この人生を使いたい……
そう強く思った20代の中頃、私は正社員を辞めた。
そして、次の仕事のことは一切考えず、やりたいことをやり続けた。
当然貯金は減っていく。
とうとう残りわずかになったら、慌てて仕事探しに奔走し、またガーっと働く。
そうして、ある程度の貯金ができると、また一切仕事なんかせず、自分がやりたいことに没頭する。そんな感じの生き方が続いた。
ふつうに考えて、仕事を続けたまま、そこでしっかりと収入を得ながら、家に帰って、自分が好きなことに没頭する毎日の方がいい。でも私には、それがとてつもなく難しいことに感じられた。
私がずっと、怖さや不安を抱いていたこと。
それは、この社会で常識とされる「仕事のやり方」だった。
面白いなって思った仕事も、少し経つと、イヤで仕方なくなっていくのだった。
自分にとってあり得ないと思うやり方が、この社会では、当然のように要求されるのだった。
スピードが常に優先され(より多く処理することが常に求められ)、一日8時間以上も働くのが当たり前で、あげくには週5日も連続勤務するのが当然という空気。
そのいずれも、私には、ひどく疲れ果てていくものでしかなかった。
私には、ものすごく難しく感じた。
だから、最後には必ずイヤになるのだった。
こんなこと、いつまでもやってられないと。
もうこんなことしたくない……
そう思う自分が、いつもいるのだった。
どっちかしか自分はできない……そう思った。
「仕事も、自分が好きなことも、どちらも、ものすごいエネルギーを必要とするのに、それを両方同時に走らせるなんてムリでしょ……バランスなんてムリでしょ……」
貯金が残りわずかになると、いつも同じパターンを繰り返した。
「仕事したくない、働きたくない」という思いを抱えたままでの仕事探しだった。
そして、いつものように、極端にムキになってしまう自分が顔を出すのだった。
「どうせしなくちゃいけないのなら、もうとことんやってやろう」
そうやって、なにか仕事の鬼のようになるのだった。とことんそれと向き合い、とことん思考錯誤し、とことん走り回る自分がいるのだった。そうして少し経つと、「もう十分やった」という気持ちとともに、その場から去っていくのだった。後回しにされてしまった自分の好きを挽回するかのように、今度は一切仕事なんかせず、家の中に籠るのだった。
あるとき思った。
自分は、このやり方をまだ続けていたいだろうかと。
これからさきも、こうやって生きていたいだろうかと。
もう十分だと思った。
もう十分、味わい尽くしたと思った。
こういう極限状態は。
心も身体も限界を味わう、こういう生き方は。
自分はどうしたいのだろう……と思った。
何を望んでいるのだろう……自分は。
気持ちよくいられる場所にいたいと思った。
ガリガリと自分を削ることのない場所にいたいと思った。
そういう場所を見つけて、生活していけるだけの収入をしっかりそこで得て、心も身体も余裕のある毎日の中で、安心して、自分の好きに没頭したい。そういう環境の中で、自分の好きを積み重ねていきたい。仕事でも、そして家に帰ってからも、気力も体力も満タンの自分がいる。そういう状態を創りたい……
それを、しっかり意識し始めた頃だった。
原因が分かっていったのは。
というか、事実を受け入れざる得なくなったというか……
自分は、そこまで強い身体を持って生まれてはいないのだということ。
だからこそ、一日8時間も働くともうクタクタだったし、ましてや週5勤務など、精神が持つはずがなかった。それだけでも過酷すぎたのに、そこにとどめを刺したのが、肉体労働だった。ものすごい体力が必要な仕事ばかりを、私は選んでいたのだった。
心も身体も限界となるのは当然だった。
原因はすごくシンプルだった。
自分に合わないことをしている。
それだけだった。
その事実を受け入れるまで、私は相当な時間を要した。
身体を動かすことが好きだったから。
デスクワークみたいな仕事は、自分には合わないことを痛感していたから。
身体を動かす仕事ができないのなら、自分にはもう何が残っているのか……
そんな気持ちだった。
必死で考え続けた。
身体を動かす仕事といっても色々ある。
自分に合うやり方があるかもしれない。
もっと自分を大切にして働ける場所があるかもしれない。
やり方があるはず。方法が何かしらあるはず。
短時間OKの場所を探してみようと思った。移動時間も短くしたいから、家の近くで探してみようと思った。いまは実家暮らしだから、思い切って、本当に必要なだけの収入にしてみようと思った。働く時間をおもいっきり短くしてみようと思った。
自分に合う場所が見つかるまで、探し続けてみようと思った。
とことん探し続けてみたいと思った。
自分を大切にできる場所……
自分が気持ちよくいられる場所……
気力も体力も満タンの自分が、仕事を楽しみ、自分の好きを積み重ねている生活。
次は、そこへ行きたいと思った。

